参考書は何周するべき?——1周目は「×をつける周」、2周目からは×の問題だけ
「3周しよう」と決めても、解ける問題まで毎回解き直していると時間が足りなくなります。周回の数ではなく「×が消えたか」で進める回し方と、解説を読んだあとの解き直し、範囲の決め方を整理しました。
「この参考書、何周すればいいですか?」
学習相談でよく聞く質問です。「3周」「5周」と回数を決めて取り組む人も多いと思います。
ただ、回数で決めると困ることがあります。1周目で解けた問題も、2周目・3周目で毎回解き直すことになり、時間の大半が「もう解ける問題」に使われてしまうのです。
この記事では、回数ではなく「×が消えたか」で進める回し方を、1周目・解き直し・2周目以降・範囲の決め方の順に整理します。参考書の「順番」(どの本を使うか)については基礎問題精講と青チャートの記事などで扱っているので、ここでは1冊をどう回すかに絞ります。
「何周するか」より「×が消えたか」
先に全体像です。
- 1
1周目:全問を解いて印をつける
解答を見ずに解けたか、で○・△・×をつける
完璧を目指さない。解けない問題を見つけるのが1周目の役割
- 2
その日のうちに:×の問題を解き直す
解説を読んだら閉じて、白紙からもう一度解く
「読んで分かった」で終わらせない
- 3
2周目以降:×の問題だけ
日を空けて、×の問題だけを解き直す。自力で解けたら○に
解ける問題は解き直さない
- 4
次の段へ
その本を最後まで通し、×の問題を解き直したら、次の役割の本へ
途中で上の段の本に乗り換えない
周回の数は、×の数しだいで人によって違ってかまいません。ある単元は2周目で×が消え、別の単元は4周目までかかる。それで自然です。
印のつけ方:○・△・×
1周目は、1問ごとに印をつけます。基準は「解答を見ずに、最後まで自分で解けたか」です。
| 印 | 状態 | 2周目に回すか |
|---|---|---|
| ○ | 解答を見ずに最後まで解けた | 回さない |
| △ | 方針は合っていたが、計算ミスなどで答えが合わなかった | 原則回さない。ミスの種類を1行メモ |
| × | 手が出なかった・途中で解答を見た | 回す |
ポイントは、途中で解答をちらっと見た問題も×にすることです。「最初の一行だけ見たら、あとは解けた」は、本番では最初の一行が出てこないということです。×にしておけば、2周目でもう一度その一行を自分で出す練習ができます。
印の横に解いた日付を書いておくと、2周目でいつの×かが分かり、間隔の目安にもなります。
1周目は完璧を目指さない
1周目でよくある失敗は、1問ずつ完璧に理解してから次へ進もうとして、なかなか先に進まないことです。
1周目の役割は、その本の中で自分が解けない問題がどこにあるかを見つけることです。手が出ない問題に長く止まるより、解説を読んで×をつけ、先へ進むほうが、1冊全体の地図が早くできあがります。
×が多くても気にする必要はありません。×の数は、2周目でやることのリストです。
解説を読んだら、閉じて解き直す
×の問題は、解説を読んで終わりにせず、その日のうちに解説を閉じて、白紙からもう一度解いてください。
解説を読むと「なるほど、分かった」と感じます。でも、その感覚はあてになりません。
心理学では、思い出す練習(テストのように自分で答えを出すこと)が、読み直すよりも記憶を長く残すことが繰り返し確かめられています。よく引用される実験(Roediger & Karpicke, 2006)では、学生が文章を学習したあと、
- 5分後のテストでは、読み直したグループのほうがよく覚えていた
- ところが2日後・1週間後のテストでは、思い出す練習をしたグループのほうがよく覚えていた
- しかも読み直したグループのほうが、「覚えられた」という自信は高かった
という結果でした。文章を覚える実験なので、数学や物理の問題とは条件が違いますが、「読んで分かった気がする」と「あとで自分で出せる」が別物だという点は、問題集の解き直しにもそのまま当てはまります。
学習法を幅広く比べたレビュー(Dunlosky et al., 2013)でも、10の学習法のうち効果の裏づけが最も強いと評価されたのは、練習テスト(自分で思い出す・解く)と分散学習(間隔を空けて繰り返す)の2つでした。
2周目は日を空けて、×の問題だけ
2周目は、1周目の直後ではなく日を空けてから取り組みます。上のレビューで効果が高いとされた「分散学習」は、同じ量の練習を一度にまとめず、間隔を空けて繰り返すやり方です。
2周目で解くのは×の問題だけです。
- 自力で最後まで解けたら → ○に変える
- また解けなかったら → ×のまま、3周目に回す
これを×がなくなるまで繰り返します。周回が進むほど解く問題が減るので、2周目以降は1周目よりずっと早く回ります。
範囲はページではなく問題番号で決める
毎日・毎週の範囲は、「今日は20ページ」のようなページ数ではなく、「No.301〜312」のように問題番号で決めるのがおすすめです。
ページ数だと、解説が長いページと短いページで負担が大きく変わります。問題番号で決めておけば、何問終わったか・何問残ったかがはっきりします。
範囲の決め方は、その本の問題数 ÷ 使える週数で1週間あたりの問題数を出すのが基本です(詳しい計画の作り方は別の記事で扱います)。
終わらなかった問題は、翌週の範囲に足します。積み残しが見えないまま先に進むと、×がどこにあるか分からなくなるからです。
当塾の学習管理システムでも、毎週の課題は問題番号で配信し、チェックがつかなかった問題は次の週の課題に自動で繰り越されるようにしています。
まとめノートとの付き合い方
参考書の内容を自分のノートにまとめ直す勉強法があります。まとめること自体が悪いわけではありませんが、ノート作りに時間を使いすぎて、問題を解く時間が減っていないかは気をつけたいところです。
先ほどのレビュー(Dunlosky et al., 2013)では、要約・マーカー・読み直しは、練習テストや分散学習に比べて効果の裏づけが限られると評価されています(効果がまったくないという意味ではありません)。
ノートを作るなら、×の問題について「どこで詰まったか」を1行だけ書く程度がおすすめです。例えば「場合分けの境目が出せなかった」「どの公式を使うか選べなかった」。2周目の前にこの1行を見るだけで、自分の弱点が分かります。
次の段へ進む目安
当塾では、今の本を最後まで通し、×の問題を日を空けて解き直したら、次の役割の本へ進みます。最後まで続けられたなら、その本のレベルは合っていたということです。あわせて、面談で「その解き方を選んだ理由」を言えるかを確認します。答えの流れを覚えてしまっているだけだと、理由を聞かれたときに説明できないからです。
よくある質問
- Q.2周目で×が全部消えたら、3周目は要りませんか?
- A.×が残っていなければ、その単元は先に進んでかまいません。全部解けたのに念のため最初から解き直すと、その時間で次の段の問題が解けます。不安なら、次の段の本で同じ単元の問題に取り組むことが確認の代わりになります。
- Q.何日あければいいですか?
- A.決まった正解はありません。翌日だと解法をまだ覚えているので、自力で解けたのか覚えていたのか区別しにくくなります。1週間単位で計画を立てているなら、翌週の課題に×の問題を混ぜるのが取り組みやすい方法です。
- Q.解答を丸暗記してしまいそうです。
- A.2周目で解けたときに、「なぜその解き方を選んだのか」を一言で言えるか確認してください。言えなければ、答えの流れを覚えているだけかもしれません。その場合は×に戻して、解説の「方針」の部分を読み直します。
- Q.基礎問題精講は例題だけ回せばいいですか?
- A.例題のすぐ下にある演習問題までセットで解いてください。基礎問は例題数を絞っている分、演習問題で定着を確かめる作りになっています。印も演習問題までつけます。
どの本を使うか(順番)と、その本をどう回すか(使い方)がそろうと、毎週やることがはっきりします。科目ごとの本の役割は、基礎問題精講と青チャート・物理のエッセンス・大岩と頻出1000・学校の傍用問題集の記事で解説しています。
出典・参考
- Roediger & Karpicke (2006) Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention. Psychological Science, 17(3), 249–255
- Dunlosky et al. (2013) Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58
- Association for Psychological Science「Which Study Strategies Make the Grade?」(上の論文の紹介)
記事中の書名・版・構成は執筆時点の出版社公式情報にもとづきます。改訂により変わることがあります。問題文の転載は行っていません。
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