数学の応用問題が解けない・応用問題に強くなるには——解き方を当てずっぽうに試さず、「何を求めるか」から逆にたどる
数学の応用問題になると手が止まる。知っている解き方を順に試しては外れる。原因を「解き方の引き出しが足りない」と「引き出しから選べない」に分けて、何を求めるか→何が足りないか→どうつなぐかの3つの問いと、解いたあとの振り返り方をまとめました。
「基本問題は解けるのに、応用問題になると手が止まります」
「解説を読むと分かるのに、自分では最初の一歩が思いつきません」
数学で、とてもよく聞く悩みです。公式も解き方も覚えたはずなのに、問題の形が少し変わると何から手をつければいいか分からなくなる。
この記事では、応用問題で止まる原因を分けて、初めて見る問題の前で何を考えればいいかをまとめます。
応用問題で止まる原因は、大きく2つ
基本問題と応用問題の違いは、どの解き方を使うかを、問題が教えてくれるかどうかです。教科書の章末問題なら、その章で習った解き方を使えば解けます。応用問題では、どの解き方を使うかを自分で選ぶところまでが問題の一部になっています。
そこで止まる原因は、大きく2つに分かれます。
| 原因 | 状態 | 次にやること |
|---|---|---|
| 解き方の引き出しが足りない | 解説を読んでも「この解き方は知らなかった」と感じる | 解き方を身につける本(②)を最後まで仕上げる |
| 引き出しから選べない | 解説を読むと「知っている解き方だ」と思うのに、自分では思いつかない | 下の3つの問いで、使う解き方を絞る |
解説を読んだときの感じ方で、どちらかがおおよそ分かります。この記事で主に扱うのは2つ目、知っているのに選べないほうです。1つ目は記事の後半で扱います。
知っている解き方を順に試すと、なぜ解けないのか
選べないとき、頭の中ではこんなことが起きていることが多いはずです。
「二次関数っぽいから平方完成かな。だめだ。じゃあ判別式? それもちがう。とりあえず全部展開してみるか……」
知っている解き方を順に当てはめていく方法です。引き出しが少ないうちは当たることもありますが、引き出しが増えるほど試す候補も増え、試験時間が足りなくなります。そして、当たっても外れてもなぜその解き方なのかが残らないので、次に似た問題が出ても、また同じように試すことになります。
「何を求めるか」から逆にたどる3つの問い
ここからの手順は、当塾からの提案です。解き方から考え始めるのではなく、ゴールの側から考え始めます。
- 1
何が聞かれているかを、はっきりさせる
最終的に出すものは何か(値・範囲・証明・個数など)を一文で言う
- 2
それを求めるのに、足りない情報は何か
ゴールを出すには、あと何が分かればいいか。今の手持ちと比べて、欠けているものを言う
- 3
今わかっている情報と、足りない情報をつなぐ解き方は何か
手持ちの条件から、足りない情報を出せる公式・考え方を探す
ポイントは、3つ目の問いで初めて解き方を考えることです。1つ目と2つ目でゴールと足りないものがはっきりしていれば、使える解き方はかなり絞られています。解き方は、たくさんの候補から「当てる」ものではなく、足りないものから「決まる」ものになります。
一度でゴールまでつながらないのは普通のことです。3つ目の問いで解き方が見つからなければ、2つ目で見つけた「足りない情報」を新しいゴールにして、もう一度1つ目から考えます。この繰り返しで、ゴールから手持ちの条件まで道がつながったら、あとは逆順に計算するだけです。
ゴールの側から考えるこのやり方は、当塾が考えたものではありません。数学者のポリアは、問題の解き方についての本『いかにして問題をとくか』で、まず未知のもの(求めるもの)は何かを問い、未知のものが同じか、よく似ている見覚えのある問題を思い起こすことを勧めています。同じ本では「逆向きに解く」ことも、問題を解くための考え方の一つとして挙げられています。
例:二次関数の問題でたどってみる
次の問題でやってみます。
1回目
- 聞かれているもの:a の値の範囲。答えは a についての不等式
- 足りない情報:「x 軸の正の部分と異なる2点で交わる」を、a の不等式に言いかえたもの
- つなぐ解き方:放物線と x 軸の交わり方は、グラフの形で決まる。下に凸の放物線が x 軸の正の部分と2点で交わるのは、「頂点が x 軸より下にある」「軸が x > 0 の側にある」「x = 0 での値が正」の3つがそろったとき
2回目(1回目で出てきた3つの条件を、新しいゴールにする)
- 聞かれているもの:3つの条件それぞれを、a の不等式で書いたもの
- 足りない情報:頂点・軸・x = 0 での値を a で表したもの
- つなぐ解き方:頂点の位置は判別式(または平方完成)、軸は x = a、x = 0 での値は a + 2 で出せる
ここまで来れば、あとは計算です。判別式から a < −1 または a > 2、軸から a > 0、x = 0 での値から a > −2。3つを合わせて、a > 2 になります。
「判別式」「軸」「端の値」という解き方は、どれも知っているものだったはずです。止まっていたのは計算ではなく、この3つを使えばいいと気づくところでした。「交わり方を a の式にしたい」とはっきりさせてから解き方を探すと、「交わり方はグラフの形で決まる」と気づきやすくなります。
研究で分かっていること:逆にたどるのは「浮かばないとき」の手順
物理(運動の問題)で、熟達した人と初心者の解き方を詳しく比べた研究があります(Larkin ほか、1980年)。初心者は多くの問題を求める答えの側から、与えられた量へ逆向きにたどって解きました。一方、熟達した人は、易しい問題では与えられた量から前向きに式を立てていました。論文の要旨では、熟達した人の知識は、問題のパターンから必要なものを引き出せる形で整理されていると述べられています。
比べたのは熟達した人1人と初心者1人で、易しい問題についての結果です。それでも、慣れた人には、易しい問題なら使う解き方がすぐに分かっている、という様子がうかがえます。
また、ゴールと今の状態の差を埋めながら解いていくやり方は、頭の処理能力を大きく使うため、解き方のパターンを身につけることには回りにくい、と述べた研究もあります(Sweller、1988年)。「この形の問題にはこの解き方」という結びつきを覚える余裕が残りにくい、という考え方です。
どちらも高校生の勉強法を直接比べた研究ではありません。ここから先は当塾の考え方ですが、次のように受け止めています。
- 逆にたどる3つの問いは、すぐに解き方が浮かばないときのための手順
- 解き方がすぐに浮かぶようになるには、解けたあとに解き方を振り返ることが要る
解いたあとは「なぜその解き方か」を一言で
ここからも当塾の提案です。応用問題を解き終えたら(解説を読んで分かった場合も)、次の3つを自分の言葉で言えるか確かめます。
- この問題で、最終的に求めたものは何だったか
- そのために足りなかった情報は何だったか
- なぜその解き方で、足りない情報が出せたのか
例題なら、「x 軸との交わり方を a の式にしたかった → 交わり方はグラフの形で決まるから、判別式・軸・端の値を使った」と言えればOKです。
言えなければ、答えが合っていても×にして、日を空けてもう一度解きます(2周目)。当塾でも、次の段に進むかを確かめるときに「なぜその解き方を選んだか」を言えるかを見ています。答えの流れを覚えているだけだと、ここで説明できないからです(参考書は何周するべき?)。
先ほどのポリアの本でも、問題を解く4つの段階(問題を理解する・計画を立てる・計画を実行する・ふり返ってみる)の最後に、ふり返りが置かれています。
これを続けると、「交わり方 → グラフの形」のようなゴールと解き方の結びつきがたまっていきます。結びつきが増えるほど、逆にたどらなくても解き方が浮かぶ問題が増えていきます。
物理でも同じ考え方が使えます。物理の場合は「どの法則を使う場面か」を言えるようにする、という形になります(物理の公式を覚えても解けない)。
引き出しが足りないなら、②の本を先に仕上げる
解説を読んで「この解き方は知らなかった」と感じることが多いなら、原因は1つ目、引き出しが足りないほうです。この場合、3つの問いを使っても、つなぐ解き方が何も出てきません。
解き方の引き出しを作るのは、解き方を身につける本(②:基礎問題精講・青チャートなど)の役割です。②の本を最後まで通し、×の問題を日を空けて解き直してから、入試の標準問題を解く本(③:1対1対応の演習・標準問題精講など)に進みます(当塾の目安)。②が終わっていないのに応用問題が解けないのは、段の順番としては自然なことです。
今の本のレベルの目安は参考書のレベルが合っているかの目安、②の本の選び方は基礎問題精講と青チャートはどっち?で書いています。
よくある質問
- Q.数学の応用問題が解けないのはなぜですか?
- A.解き方の引き出しがまだ足りないか、引き出しはあるのにどれを使うか選べないかの、どちらかであることが多いです。解説を読んで「知らない解き方だ」と感じるなら前者、「知っている解き方だ」と感じるなら後者です。
- Q.応用問題に強くなるには、どうすればいいですか?
- A.解き方から考え始めず、「何が聞かれているか → それを求めるのに足りない情報は何か → 手持ちの情報と足りない情報をつなぐ解き方は何か」の順で考えます。解いたあとに「なぜその解き方を選んだか」を一言で言えるようにしておくと、次は解き方が浮かびやすくなります。
- Q.基本問題は解けるのに、応用問題になると解けません。
- A.基本問題では、使う解き方を問題が教えてくれます。応用問題では、それを自分で選ぶところまでが問題です。基本問題を解くときから、「なぜこの解き方を使うのか」を言えるか確かめておくと、応用問題で選びやすくなります。
- Q.応用問題集をたくさん解けば、解けるようになりますか?
- A.解き方の引き出しが足りないうちは、応用問題集を増やしても同じところで止まりがちです。まず解き方を身につける本(基礎問題精講・青チャートなど)を最後まで仕上げ、それから入試の標準問題を解く本に進んでください。
解き直しと2周目の回し方は参考書は何周するべき?、物理で同じ悩みがあるときは物理の公式を覚えても解けないを読んでみてください。
出典・参考
- G.ポリア著・柿内賢信訳『いかにして問題をとくか』丸善出版
- 丸善出版『いかにして問題をとくか』特設ページ(問題解決への4つのステップ)
- G. Pólya『How to Solve It』Princeton University Press
- Larkin, McDermott, Simon & Simon (1980) Expert and novice performance in solving physics problems. Science, 208(4450), 1335–1342
- Sweller (1988) Cognitive load during problem solving: Effects on learning. Cognitive Science, 12(2), 257–285
記事中の書名・版・構成は執筆時点の出版社公式情報にもとづきます。改訂により変わることがあります。問題文の転載は行っていません。
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