物理のエッセンスの使い方とレベル——難しいと感じたら、宇宙一・良問の風との順番を見直す
物理のエッセンスの使い方とレベルを、講義の本(宇宙一)・入試演習の本(良問の風)との順番で整理しました。「エッセンスから始めたけれど進まない」の原因は、本の難しさより順番にあることが多いです。
「物理のエッセンスがいいと聞いて買ったけれど、最初の数ページで手が止まった」
学習相談でよく聞く話です。そして多くの場合、原因は本の難しさではなく使う順番にあります。
この記事では、物理の参考書を「役割」で分けて、エッセンスがどこに置かれる本なのか、どこから始めて何に繋ぐのかを整理します。
物理の参考書にも「役割」がある
数学と同じく、物理の参考書も4つの役割に分けると整理しやすくなります。
- 1
講義・理解
宇宙一 など
- 2
解法習得
エッセンス/基礎問 など
- 3
入試標準演習
良問の風 など
- 4
難関・過去問
名問の森/過去問
| 役割 | 何をする本か | 物理での代表例 |
|---|---|---|
| ① 講義・理解 | 初めて習う分野の考え方を、図や例えで説明する | 宇宙一わかりやすい高校物理(学研) |
| ② 解法習得 | 基本的な問題の解き方の流れを身につける | 物理のエッセンス、基礎問題精講、エクセル物理 |
| ③ 入試標準演習 | 入試の頻出・標準問題で、解法を使いこなす | 良問の風 |
| ④ 難関・過去問 | 難関大の問題、志望校の形式 | 名問の森、物理重要問題集、過去問 |
出版社の説明を見ると、この役割分担がよく分かります。
② 解法習得
物理のエッセンス(力学・波動/熱・電磁気・原子)
河合出版・浜島清利・五訂版(2023年9月)
- 公式の説明: 「感覚的な理解」と「考え方の流れ」が身につく
- 対象学年: 高2・高3
- 目的: 2次・私大
③ 入試標準演習
良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集
河合出版・浜島清利・三訂版(2023年10月)
- 154題+巻末に論述問題
- 公式の説明: 難問を避け、頻出・オーソドックスで応用がきく問題
エッセンスは、公式の紹介文どおり「感覚的な理解」と「考え方の流れ」を身につける本です。講義の要素もありますが、説明は簡潔で、すぐに例題で手を動かす構成になっています。物理を一度も習っていない分野で、これ1冊だけで理解から始めると、説明の行間を自分で埋める必要があり、ここで止まる人が多いのです。
どこから始めるか——「習ったかどうか」で決める
学校で習った分野は、エッセンスから始めてよい
授業で一通り習い、教科書の内容は何となく分かるという分野なら、①は飛ばしてエッセンスから入って構いません。説明パートは流し読みにして、例題を中心に進めれば期間も短くできます。
まだ習っていない分野は、講義の本を先に
未習の分野は、宇宙一のような講義の本で「何が起きているのか」をつかんでからエッセンスに入ると、止まりにくくなります。
エッセンスが「難しい」と感じたときの2つの原因
原因1: その分野をまだ習っていない
上で書いたとおりです。講義の本を辞書として横に置けば解決することが多いです。
原因2: 教科書レベルと入試レベルの間の段差
授業では分かったつもりなのに、エッセンスの例題で手が止まる。これは「定期試験の問題」と「入試の基本問題」の間に段差があるためです。
この段差を埋めるための本として、旺文社の入門問題精講があります。出版社の説明はまさに「定期試験と入試問題のギャップをうめる演習書」で、121題を見開き2ページで扱っています。独学で物理を始めた人が講義の本からいきなり解法の本へ進む場合に、間に挟む候補です。
やってはいけないこと: 基礎問題精講と2冊重ねる
エッセンスが合わないと感じたとき、旺文社の基礎問題精講(物理 五訂版・105題)に乗り換えるのは選択肢の一つです。どちらも②の本なので、乗り換えるならエッセンスはやめる。両方を順番にやると、同じ役割の本を2回やることになり、③に進むのが遅れます(この「同じ役割の本は1冊」の考え方は、基礎問題精講と青チャートの記事で詳しく書きました)。
状況別の始め方
| あなたの状況 | 宇宙一(①) | 入門問題精講 | エッセンス(②) |
|---|---|---|---|
| その分野を学校でまだ習っていない宇宙一を1単元読んだらすぐエッセンスの同じ単元へ | ◎ | △ | ○ |
| 習ったが、エッセンスの例題で手が止まる段差を入門問題精講で埋める。講義の本は辞書として | △ | ◎ | ○ |
| 習っていて、エッセンスの解説を読めば分かる説明は流し読み、例題中心で速く進める | × | × | ◎ |
| 学校でセミナー・リードαが配られている②は手元の本で代替できるか先に判断する | △ | × | △ |
エッセンスを仕上げたら——良問の風、その先
エッセンスの例題を自力で解けるようになったら、③の良問の風へ進みます。良問の風はエッセンスと同じ浜島清利さんの本で、記号や考え方の運び方がそろっているので乗り換えの負担が小さいのが利点です。
ただし、良問の風は「エッセンスの続編」ではありません。基礎問題精講やエクセル物理を仕上げた人が良問の風に進むのも、ごく普通のルートです。前提は「②のどれか1冊を仕上げていること」です。
難関大を目指す場合は、良問の風の先に④の本を置きます。名問の森と物理重要問題集は、どちらか1冊です。志望校の問題文が長く誘導が多いか、短い設問が多いかで選びます。
原子分野を後回しにしない
エッセンスは「力学・波動」と「熱・電磁気・原子」の2冊で、原子は2冊目の最後にあります。順番どおりに進めると、原子が入試直前まで手つかずになりがちです。
原子分野を出題範囲に含めるかどうかは大学によって違います。志望校の募集要項で範囲を確認し、含まれるなら、電磁気の途中でも原子を並行して始める計画にしてください。
よくある質問
- Q.物理のエッセンスのレベル(難易度)はどれくらいですか?
- A.出版社の表示では、対象学年は高2・高3、目的は2次・私大です。この記事の分け方では②(解法を身につける本)にあたり、入試の標準問題に慣れるのは次の③(良問の風など)です。学校でその分野を一通り習っていれば、エッセンスから始められます。
- Q.物理のエッセンスだけで入試に対応できますか?
- A.エッセンスは②の解法習得の本なので、入試の標準問題に慣れるには③の問題集(良問の風など)を続けるのが一般的です。共通テスト中心で記述の物理がない場合は、エッセンスの後に共通テストの過去問・予想問題で形式に慣れる、という組み方もあります。
- Q.宇宙一とエッセンス、どちらを先に買えばいいですか?
- A.学校でその分野をまだ習っていないなら宇宙一(講義)、習っているならエッセンスです。両方を買う場合も、宇宙一を全部読み終えるのを待たず、単元ごとに交互に進めてください。
- Q.エッセンスと基礎問題精講はどちらがいいですか?
- A.どちらも②の本なので、どちらか1冊です。同じ著者の良問の風・名問の森へ繋げたいならエッセンス、見開き2ページで1題ずつ区切られた構成が合うなら基礎問題精講が選びやすいです。どちらを選んでも③以降のルートは合流します。
- Q.高1でも物理のエッセンスを使えますか?
- A.出版社の対象学年は高2・高3です。高1で物理基礎を学んでいる段階なら、学校で習った範囲だけエッセンスの該当単元を使う、という部分的な使い方なら問題ありません。
出典・参考
- 河合出版『物理のエッセンス[力学・波動]五訂版』書籍詳細
- 河合出版『良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版』書籍詳細
- 旺文社『物理[物理基礎・物理]基礎問題精講 五訂版』
- 旺文社『物理[物理基礎・物理]入門問題精講 三訂版』
- 丸善ジュンク堂『宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版』(学研)商品ページ
記事中の書名・版・構成は執筆時点の出版社公式情報にもとづきます。改訂により変わることがあります。問題文の転載は行っていません。
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