物理の公式を覚えても解けない・初見の問題になると解けないときは——「どの法則を使う場面か」を言えるようにする
物理の公式は覚えたのに、問題になると解けない。模試や初見の問題で手が止まる。原因を「法則を選べない」「公式の意味があいまい」「演習の段差」に分けて、例題の解き直し方と、次の段の本へ進むタイミングをまとめました。
「物理の公式は全部覚えたのに、問題になると解けません」
「問題集の問題は解けるのに、模試の初見の問題になると手が止まります」
物理の勉強で、とてもよく聞く悩みです。公式を覚えるのは得意なのに、点にならない。
この記事では、公式を覚えても解けない原因を分けて、それぞれの直し方をまとめます。
物理の問題は「公式を選ぶ」ところで止まる
物理の問題を解く流れを分けると、次のようになります。
- 1
何が起きているかをつかむ
物体の動き・力・エネルギーのやりとりを、図にする
- 2
使う法則を選ぶ
運動方程式か、エネルギー保存か、運動量保存か
- 3
式を立てる
選んだ法則を、この問題の量で書く
- 4
計算する
公式を覚えているのは、3と4の準備ができている状態です。初見の問題で止まるのは、多くの場合その手前、1と2です。問題集の問題が解けても初見で解けないのは、問題の見た目と解き方をセットで覚えていて、見た目が変わると法則を選べなくなっている可能性があります。
研究で分かっていること:熟達した人は「原理」で問題を見る
物理の問題を、物理に熟達した人と初心者がどう捉えるかを比べた研究があります(Chi, Feltovich & Glaser、1981年)。その結果、熟達した人は問題を解くのに使う物理の原理をまず取り出し、初心者は問題に書かれている見た目の特徴を手がかりにする傾向が示されました。
別の研究(Larkin ほか、1980年)でも、熟達した人は大量の知識を、問題を見た瞬間に必要な知識が引き出せる形で持っていることが述べられています。
どちらも40年以上前の研究で、高校生の勉強法を直接比べたものではありません。それでも、「公式を覚えるだけでは解けない」ことと、問題を原理で見る練習に意味があることを示す結果です。
直し方1:例題を解いたら「使った法則」を一言で
ここからの直し方1〜3は、当塾からの提案・考え方です。
例題を解き直すとき、答えが合ったかどうかに加えて、「この問題で使った法則は何か、なぜその法則か」を一言で言えるかを確かめます。
- 例:「ぶつかって一体になる → 運動量保存(衝突の直後は外から力積を受けないとみなせるから)」
- 例:「摩擦がなく、ある高さでの速さを聞かれている → 力学的エネルギー保存(エネルギーが保存し、途中の時間は求めなくてよいから)」
言えなければ、答えが合っていても×として、日を空けてもう一度解きます。当塾でも、次の段に進むかを確かめるときに「なぜその解き方を選んだか」を言えるかを見ています(参考書のレベルが合っているかの目安)。
直し方2:公式の意味があいまいなら、講義の本の同じ単元へ
「この公式がどういう場面で成り立つのか」があいまいなまま覚えていると、法則を選べません。その場合は、講義の本(宇宙一わかりやすい高校物理など)の同じ単元だけ読み直します。
講義の本は、最初から最後まで読み直すのではなく、分からない単元だけ引く辞書として使います。読んだらすぐ、問題集の同じ単元に戻ります(物理のエッセンスの記事)。
直し方3:②を仕上げても初見で止まるなら、次の段へ
解法を身につける本(②:物理のエッセンス、基礎問題精講など)は、典型的な場面ごとに解き方を身につける本です。初見の問題で、複数の法則を組み合わせる力は、その次の段(③:良問の風など)で練習します。
②の本を最後まで通したら、③に進むタイミングです(当塾の目安)。②が終わっていないのに初見の問題が解けないのは、段の順番としては自然なことです。
模試の×は「どの段階で止まったか」で分ける
模試の物理の×は、上の1〜4のどこで止まったかで分けます。
| 止まったところ | 次にやること |
|---|---|
| 何が起きているか分からない | 講義の本の同じ単元で、現象を確かめる |
| 法則を選べなかった | 例題の解き直しで「使った法則」を一言で言う練習 |
| 式が立てられなかった | 同じ単元の例題を白紙から解き直す |
| 計算ミス | ミスの種類を1行メモして、△として残す |
模試の復習全体のやり方は模試の判定の記事でも書いています。
よくある質問
- Q.物理の公式を覚えても問題が解けないのはなぜですか?
- A.物理の問題は、公式を思い出す前に「この場面でどの法則を使うか」を選ぶ必要があり、多くの場合そこで止まっています。例題を解き直すときに、使った法則とその理由を一言で言えるかを確かめてください。
- Q.問題集は解けるのに、模試の初見の問題になると解けません。
- A.問題の見た目と解き方をセットで覚えていて、見た目が変わると法則を選べなくなっている可能性があります。使った法則を一言で言う練習をしたうえで、②の本を仕上げたら、複数の法則を組み合わせる③の本(良問の風など)に進んでください。
- Q.物理の公式は、語呂合わせで覚えてもいいですか?
- A.覚え方は自由ですが、覚えただけでは解けるようになりません。その公式がどういう場面で成り立つかを、講義の本で確かめておくことをおすすめします。
- Q.物理のエッセンスを終えたら、もう1冊同じレベルの本をやるべきですか?
- A.同じ段の本を重ねる必要はありません。エッセンスを最後まで通したら、良問の風のような入試の標準問題を解く本に進みます。
物理の参考書の順番は物理のエッセンスの使い方とレベル、今の本のレベルの目安は参考書のレベルが合っているかの目安を読んでみてください。
出典・参考
- Chi, Feltovich & Glaser (1981) Categorization and representation of physics problems by experts and novices. Cognitive Science, 5(2), 121–152
- Larkin, McDermott, Simon & Simon (1980) Expert and novice performance in solving physics problems. Science, 208(4450), 1335–1342
記事中の書名・版・構成は執筆時点の出版社公式情報にもとづきます。改訂により変わることがあります。問題文の転載は行っていません。
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