受験生の睡眠時間は何時間?——睡眠を削って勉強するより、計画は睡眠から先に決める
受験生の睡眠時間は何時間がいいのか。勉強時間を増やしたくて睡眠を削っていませんか。厚生労働省の睡眠ガイドの目安と、学習のあとの睡眠と記憶についての研究をもとに、睡眠を先に確保してから勉強の計画を組む考え方をまとめました。
「受験生なんだから、睡眠を削ってでも勉強時間を増やさないと」
そう考える人は少なくありません。ただ、勉強の目的が「覚えて、本番で使えるようにすること」なら、睡眠を削るのは遠回りになる可能性があります。
この記事では、睡眠と記憶について分かっていることを、言えることと言えないことを分けて整理し、計画の立て方に落とし込みます。
高校生の睡眠の目安は8〜10時間
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、こどもの推奨事項として、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保するよう勧めています。アメリカ睡眠医学会も、13〜18歳に8〜10時間の睡眠を勧めています。
同じガイドには、「たくさん勉強しようとすると8〜10時間の睡眠時間を確保できない高校生はどうしたらいいか」という問答まで載っています。答えの要点は、睡眠を確保すると集中力が増して学習の効率が上がり、学んだ内容も定着しやすくなるので、勉強時間と睡眠時間のバランスが大切、というものです。
ガイドでは、推奨の睡眠時間から逆算して、夜寝る時間を決めることも勧めています。
覚えたあとに眠ると、忘れにくい
睡眠と記憶の関係は、たくさん研究されています。
177本の論文をまとめた分析(Berres & Erdfelder、2021年)では、何かを覚えたあとに眠った場合は、同じ時間起きていた場合より、あとで思い出せる量が多いという結果でした。効果の大きさは「中くらい」で、研究の偏りを補正すると小さくなりますが、それでも効果は残りました。
高校生が単語を覚えた実験もあります(Gais ほか、2006年)。
- 高校生が夜に英語とドイツ語の単語ペアを覚え、その夜に普通に眠った場合と、徹夜した場合(その後に回復の睡眠をとる)を比べた
- 2日後のテストで、眠った場合は覚えていた単語がほとんど減らなかったのに対し、徹夜した場合は減り方が大きかった
- 覚えた直後の成績には差がなかった
人数が少なく(十数人)、比べたのは「徹夜」と「普通の睡眠」なので、少し睡眠を短くした場合にどうなるかまでは、この実験からは言えません。それでも、覚えた夜にきちんと眠ることが、覚えたことを残す助けになる例です。
睡眠不足が続くと、学んだことを忘れやすい
睡眠不足が何日も続いた状態で学ぶとどうなるか、を調べた実験もあります(Cousins ほか、2019年)。
15〜18歳を、5時間睡眠を5晩続けるグループと9時間睡眠を続けるグループに分け、同じ内容(生き物についての細かい事実)を学んでもらいました。その結果、5時間睡眠のグループは、30分後・3日後・数週間後のどの時点でも、忘れた量が多かったと報告されています。
管理された施設での実験で、条件は実際の生活とは違います。ただ、「睡眠を削って勉強時間を増やしても、その分だけ多く覚えられるとは限らない」ことを示す結果です。
計画は「睡眠時間を先に決めて」から
ここまでを、計画の立て方に落とし込みます。
- 1
寝る時間と起きる時間を先に決める
起きる時間から8時間以上さかのぼって、寝る時間を決める
厚生労働省のガイドも、推奨時間から逆算して寝る時間を決めることを勧めている
- 2
残りの時間で、1週間に使える勉強時間を出す
学校・部活・食事・移動を引いた残り
- 3
その時間で、1週間に進める問題数を決める
問題数 ÷ 使える週数。2〜4週やったら実際のペースで割り直す
- 4
足りなければ、睡眠ではなく量を見直す
これから進む予定の上の段の本(入試演習や難関の本)の演習量を減らす。今やっている本と、その×の問題の2周目は削らない
1週間の量の出し方は問題数÷週数の記事で詳しく書いています。
覚えたい日は、その夜にきちんと眠る
英単語や化学の知識のように「覚える」勉強をした日は、その夜に睡眠を削らないようにします。上の実験のとおり、覚えたあとの睡眠が、覚えたことを残す助けになるからです。
テスト前の徹夜は、計画の段階で防ぐ
テストや模試の前日に徹夜で詰め込みたくなるのは、たいてい、それまでの計画に余裕がなかったときです。問題数÷週数の記事のように、テスト前の週を最初から計画から引き、予備の週も1週とっておくと、前日に詰め込む量を減らせます。
よくある質問
- Q.8時間も寝たら、勉強時間が足りません。
- A.まず、今の1週間で実際に何問進んでいるかを数えてみてください。眠気で集中できていない時間が多ければ、睡眠を増やしたほうが進む量が増える可能性があります。それでも足りないときは、睡眠ではなく、これから進む予定の上の段の本(入試演習や難関の本)の演習量を減らして調整します。
- Q.受験生の睡眠時間は6時間でも大丈夫ですか?
- A.厚生労働省のガイドの目安は、中学・高校生で8〜10時間です。6時間で十分かどうかを直接確かめた研究はこの記事では紹介していないので断言はできませんが、5時間睡眠を数日続けた実験では、学んだことを忘れる量が増えていました。まずは目安に近づけるよう、寝る時間を先に決めてください。
- Q.昼寝はしてもいいですか?
- A.この記事で紹介した研究は、主に夜の睡眠についてのものです。昼寝については扱っていないので、ここでははっきりしたことは言えません。夜の睡眠時間を先に確保するのが基本です。
- Q.夜型なので、夜中のほうがはかどります。
- A.学校の始業時刻は変えられないので、夜中に勉強すると睡眠時間が短くなりやすくなります。寝る時間を先に決め、その前の時間で勉強するようにしてください。
- Q.寝ようとしても眠れません。
- A.寝つけない状態が続く、日中の強い眠気が続くといった場合は、勉強のやり方ではなく体調の問題かもしれません。保護者の方や学校の先生、医療機関に相談してください。
勉強時間の決め方は、問題数÷週数の記事もあわせて読んでみてください。
出典・参考
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(こどもの推奨事項・高校生の勉強と睡眠についての問答)
- Paruthi et al. (2016) Recommended amount of sleep for pediatric populations: a consensus statement of the American Academy of Sleep Medicine. Journal of Clinical Sleep Medicine, 12(6), 785–786
- Gais, Lucas & Born (2006) Sleep after learning aids memory recall. Learning & Memory, 13(3), 259–262
- Cousins, Wong & Chee (2019) Multi-night sleep restriction impairs long-term retention of factual knowledge in adolescents. Journal of Adolescent Health, 65(4), 549–557
- Berres & Erdfelder (2021) The sleep benefit in episodic memory: An integrative review and a meta-analysis. Psychological Bulletin, 147(12), 1309–1353
記事中の書名・版・構成は執筆時点の出版社公式情報にもとづきます。改訂により変わることがあります。問題文の転載は行っていません。
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